儲かる印刷会社と儲からない印刷会社の特徴

コロナあけ、自社でもそうだったが紙製品の受注は激減した。厳しい時代になったと痛感した瞬間だった。思い起こせばこの仕事を始めてからずっと単価競争があり、品質・納期・対応などに追われていた。そしてそれは今も変わらない。製本という仕事柄、印刷や梱包発送という前後の工程も頭に入れながら受注するのだが、印刷会社からは無理難題の要望が多く、デリバリー部分では荷姿などのクレーム対応に追われる。印刷からデリバリーまで受注している印刷会社も多くあるが各セクションに担当を配置して社内分担制としている。しかし、これがまた風通しが悪いケースがほとんどだ。営業は仕事をとって見積もりして下版作業するだけ、生産管理は社内工場生産計画、外注振り分け、場合によっては印刷と製本は全く別、平台と輪転は担当が違う、配送は配車係と外注担当。最終納品はロジスティック担当。ここまで分業されれば風通しどころか情報すら共有されない。されたとしても手が回らず見て見ぬふりする始末。これが一般的な中堅どころと大手の印刷会社の組織構造である。さて、ではどうしてこんな構造になったのだろうか?理由は様々だが一番は仕事の量が多くこうせざるを得ないためだと想像している。1つの製品をお客先まで納品するのにどれだけの部署、人を通過するのだろうか?自分はこの仕組みそのものが単価を安くし、業界を疲弊させている大きな要因と考えている。

儲からない印刷会社の特徴

主には上記の理由だが、他にのもまだある。これは自分が多くの印刷会社、同業をみて勝手に分析したものである。

1.社長が一番偉いと勘違いしている

良く見うけるシーンとしては社長室が別個に孤立しており、完全密閉されていて社員やお客さんが来たときは社内の案内係みたいな人が一度お伺いをたてる。ここまではいいのだが、アポどりをしていないと目の前にいようがお構いなしに面談を断るのである。ここで時間が取れない、全くコンタクトを取らないのではなく、ちょっと言い訳をつけて断るぐらいの器量は欲しいものだ。そして逆に時間が空いた時自ら出向く、連絡するなどの配慮が必要だ。さらに内部的なこととしては、「どこ見て仕事やってんだっ!」とか「誰の許可があってこんなことしたんだっ!とかアホみたいに怒鳴り散らしているケースだ。当然のことながら支配権や決定権は社長にあるのだが、人としては社員だろうが下請けだろうが同じ立ち位置なのである。根本的に仕事をあげてる、給料を払ってやってると表面に出てしまう社長の姿は最悪である。別に下にもぐる必要はなし、言葉尻を丁寧にする必要もないが、人間として平等であることが全面的に出せない社長は致命的なのかもしれない。

2.役員と社員の距離がある

どうしたものか、役員は仕事を執行していることが多くそのセクションの最高責任者であることが多い。営業なら営業本部長、現場なら工場長といった具合だ。上席に聞いてみないとと言った返答が多くなるのだ。指示命令系統があるので社長のそれと同じなのだが、決定権をある程度与えてその後の処理を上司がやる、それか最後まで担当者に任すくらいの器量が必要である。そのくらいしないと下は育たない、会社は伸びないのである。暇つぶしに口を出す役員を置くくらいなら省いて全体の賃金の底上げをした方がいいはずである。

3.整然としていない

これは自社にもあてはまるが、現場だけでなく、事務所も整然としていないケースだ。掃除が行き届いてないとは言わない。おそらく時間のない中でも毎日のように掃除は交代制や担当別にやっているのだろう。しかし物が多すぎてデスクやPCにたとえるとファイリングできていないのである。物は並んでいるがカテゴリーがないため探すのに時間がかかる。探す時間を換算すると一人当たり年間何百、何千時間と言う数字が出てくる。会社としては探す時間を作業に充てればそれだけで大きな利益を生むのである。そして欲を言えば導線の確保や効率を求めた設備の配置や人の動きも計算したつくりにしておけば尚のこと良い。

4.時間を守らない

営業マンだけでなく、現場も社長も全員が対象だが、約束5分前の法則が守れない。フレックスや時差出勤は別として全体として約束5分前ルールが浸透していないなどのケースだ。社長や役員、営業などは夜遅くなる場合が多くどうしても朝はズルズルである。これは仕方のないことなのか?ゴルフには早朝でも時間を守っているはずである。ゴルフと仕事は同じである意識はないのであろう。印刷会社の場合、トラックの手配など物の動きも時間として扱われる。うちの場合、朝8:00着とか午前中着とかいう指定で物が流れる。私は1分でも遅れたら遅刻扱いをしている。なぜなら、預かる時間を約束してそのための準備を社内にしているからだ。1時間遅れたらそこに携わる人間数×時間給が損失なのである。当然最悪なケースも想定して出勤させ別の仕事を準備して全数損失は免れているがこれが両社にとっての一番の信用なのである。担当者によってはドライバーの問題なんで何時につくかわからないとまで言う。積む時間、走る距離、走行回路、荷下ろし時間まで単純にデータ化してエクセルか何かで作ればいいと思う。現代社会においてこれができない印刷会社が90%である。正直情けない。この程度のシステムが作れない会社の下請けなどやっていると真面目にあほくさくなる。時間のことで言えば人間の幸福感を出すホルモンは朝しかでないと言われている。重役出勤で11時出社、18時接待をしている方たちは幸せ感はないのである。その会社が儲かって幸せになるわけがない。

5.ビジョンがない

おそらくこれが一番決定的な場合である。会社の入り口や応接などによく、経営指針、経営方針などが掲げている会社をみかける。すばらしいことだ。しかし、いざ社長と話すと、「いやー、この先どうなるのかね?」とか「目先の金が忙しくて中々設備まで頭まわらないよ。」という。こちらも「ですよねー。」と相槌を打つのであるが、内心はどこに行っても退屈な話ばかり、この会社も将来はあまりよくないと感じてしまうのである。設備で仕事をしている装置産業の会社がそこなくしたら終わりだろうと思うのである。設備を減らして違った何かを考えているなら逆に健全で前向きかもしれない。しかし3年後なんかわからないのに来月なんか全くわからないよと答えている社長をみると金融機関や税理士とはどんな話しているのか不安になってしまう。

儲かる印刷会社の特徴

一方で儲かっている、儲かりそうな印刷会社を見ると、儲からない印刷会社の逆であるが更に違うものが見えてくる。それは顔である。人相だけではない、会社の顔もである。会社の入り口ではない、ここが会社の顔なんだという場所がある。それは事務所かもしれないし、事務員だったリス場合もある。ここが会社の顔なんだというところが必ずある。そこは決してきれいではないが光るものがあるのだ。これを見つけると私もうれしくなる。「社長の工場のトイレはいつきてもきれいですね。」と話すと嬉しそうに社長が「うちの事務員がいつも掃除してるんだ。あんなぶっきらぼうだけど、奴がいないと大変なんだよ。」と答える。まさにこの会社の顔はトイレであり、事務員なのである。それを称える社長もまた顔なのである。たいていの場合、そういう場面では「少し時間あるかい?」と尋ねられる。少しの面談すると多くは現状の話でなく、明日の話、来月の話、来年の話である。まさしく未来についての話である。これは仮に私がミスをして謝りに行っても同じなのである。決して上からくることもなく、下にもぐるわけでもなく対等なな扱い、ふるまいをしてくれる。そうして雑談してわかることはほぼ全員朝が早いことだ。場合によっては朝食ミーティングを約束することもある。

まとめ

儲かっているか、もうかっていないかは正直定かではない。ただ、元気があって先を見ている会社にはエネルギーがある。個人的なことではあるが、私は元気のないエネルギーが感じない会社とはお付き合いしないようにしている。なぜなら私自身まだ吸い取られてもいいと思えるほどのエネルギッシュな器量はないからだ。だから今はまだエネルギーのある会社や人と沢山お付き合いをしてエネルギーを吸収したいと思っている。

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