今、投資をやるべきか

2023年、年末にさしかかってきたところで、製本の仕事をしていると夏以降かなりの確率で新NISAの解説書、積み立てNISAからの移行についての冊子を作ってきた。日本ではお金に関する勉強は学生時代にすることはほとんど少ない。お金というと親からはお金の話ばかりするなとかお金は二の次にしろみたいな文化が根付いている。お金=汚いものの扱いをされている。私自身は幼少時代に親が買ったもののお釣りを計算したりすることがとても好きだった。なので数字に関していうと得意分野で文系出身であるが確率統計データなどの数字には今でも敏感に反応する。そして現代社会では投資という言葉が一般的だが、この投資に関しては学校教育で習うこともなく専門学校か経営学部以外で教わることはないと思っている。お金リテラシー、投資リテラシーみたいなものは日本人にとって皆無なのである。そこに突然、NISAがいいからどうぞと言われても中々手がつけにくいのではないかと思っている。実際、私自身も投資については会社の設備投資以外の知識は皆無であったが2012年以降は会社の決算書上の有価証券欄を気にすることがあったためかなり勉強をしてきたつもりだ。当時は難しい本しかでておらず言葉を覚えることすら大変だった記憶がある。しかし難しく考えることは苦手なので、まずは会社の勘定科目を引っ張り出してみることにした。

ゴルフ会員券の役割

私自身ゴルフをやるわけではないが、会社名義、私名義特定のゴルフの会員書やネームプレートが届くようになった。何のため?の疑問しかなかったが、叔父が勝手に私の名前を登録したのだ。そこで色々ゴルフ会員券について調べることにすると、さてさて25年前に会社での購入履歴があり、当時の金額で3800万円というものであった。ゴルフ会員権は株と同じで価格変動していた。高いものは2000万円~8000万円くらいの価値があり、2000万円で買ったものが4000万円で売れたり、所有している間はビジター料金が3万円のところ1万円でプレー出来たり会員専用のブースが使用出来たりお得感と優越感を味わえる商品設計であった。ところが時代が変化しゴルフも特定の金持ちではなく、一般的ユーザーが普通のスポーツとして取り扱われる時代になるとプレー費も会員とさほど変わらず且つ会員権の値段も急激に下がり2000万円の価値などほど遠く100万円を切る時代がやってきたのだ。さて会社で購入した会員権は決算上どこに所属するかと言えば資産の有価証券には属するのである。弊社の場合、この時価総額3800万円の有価証券は2020年夏の時点で10万円ほどの価値となっていた。しかも毎年会員権の更新料が15万円もかかっている。この会員権を売ってしまえば会社の総資産価値は当然下がることになるのだ。会社の価値が下がることを嫌いそのまま保有していたのであるが、金融機関や保証会社などが見れば時価総額で計算すれば価値がないことは一目瞭然である。同じことは土地などの不動産にも言えるのだが不動産価値は逆に値上がりしていることが多く、借り入れの担保としても扱われることが多い。

単利と複利の違い

さて、会社の価値のない有価証券についてはここまでとし、金融投資について話を戻そう。身近な数字で言うと例えば100万円の現金があったとしよう。普通預金においておけば年利0.001%金利として10円である。20.315%の税金を引かれるため実際には7円である。仮に金融機関が金利0.02%などをやっても200円である。しかも単利である場合が多く、何年たっても同等額の金利である。なので100万をある一定期間おいておける環境ならば普通預金に置いておくことはない。あくまでも投資という観点ではあるが、100万円を仮に5年間置いておけるとしよう。通常なら金利の高い場所に置いておくのである。5%金利がつく投資商品があったとしよう。100万円を1年置いておけば5万円の利子がつき、50,000円×5年=250,000円となり、この時点で税引きして受けとるなら単利ならば39,532円×5年=197,660円の手取り配当となる。これが複利ならどうか税引き前で計算しよう。

No.年数元利合計利息実質金利
11年目1,050,00050,0005%
22年目1,102,500102,50010.25%
33年目1,157,625157,62515.7625%
44年目1,215,506215,50621.5506%
55年目1,276,282276,28227.6282%
複利の税引前

276,282円×0.2315=63,960円の税金を引いて212,322円の手取り利子となる。これが単利と複利の差である。当然これだけを見れば普通預金での投資など考えにくい。しかい、5%確約されている金融商品などは少ないが、ある程度年数を置いておけばこのような数字になっていく。

ドルコスト法

よく使われるリンゴの例えはよく見かけるがここではもう少し金融商品っぽく話してみよう。さきほどの仮の100万円で1個あたり1万円の株を買ったとしよう。株券は100万円÷1万円で100枚の株券を保有することになる。ここでは配当はいったん無視して考える。5年後に1.1万まで株の価値が上がれば1.1万円×100枚保有なので110万円となり税引前だが10万円得したことになる。これが5年間かけて毎年20万円づつに分けて株を購入することにするとどうか?1年目は株単価1万円、2年目は7,000円、3年目は6,000円、4年目は8,000円、5年目は11,000円であったと仮定すると1年目は20万÷1万円=20枚、同様に2年目以降を計算すると2年目28.5枚、3年目33.3枚、4年目25枚、5年目18.1枚となり合計124.9枚保有できたこととなる。つまり株価は下がるが保有する枚数は増えるのである。これを同様に株価1.1万円の時に売買すれば1.1万円×124.9枚=1,373,900円となり37.3万得したことになる。これがドルコスト法だ。ドルコスト法は下がり続けるような株だと向かないが、株価は下がりながらでも将来的に上昇しそうな株には有効だ。

NISAは

さて、NISAであるが積み立てNISAの場合、年間40万円を毎月積み立てることができる。更にドルコスト法に加え複利なために上記2つの有益部分が設定されているのだ。金融商品を自分で選ぶこともできる。安定型と言えば大幅なあがりはないがじわりじわり上昇していき長い間保有しておけば大きな利益を期待できる。しかも普通の株投資と違い引き出しタイミングが新NISAの場合1800万円まで非課税なのだ。確かにこれを使わない手はない。仮に1800万を超えても長い間の保有であれば大きな利益を生むことになる。実際には積み立てNISAを40万×20年間=元本800万であるが今の試算では倍くらいは見込まれている。これに新NISAの課税対象引き上げと限度額引き上げならば尚更投資価値は高い。

結局、投資リテラシーとは

基本的に投資に関して教えてくれる教育機関は少ない。必要ならば金融機関やコンサルが行うセミナーに参加することが早いが、会社経営者の場合、特に設備型の産業を行っている社長ならば会社に置き換えらるのでイメージ付きやすいはずだ。まず、現状の中で利益を出た分で再分配投資すればよい。決算前予想で利益が出そうなら予め次の投資、設備、人、金融商品、不動産などに投資予定を組む。人の場合には社員の賃上げモチベーションアップにつなげれば良いし、設備投資するなら買える額を想定し次の事業展開につなげれば良い。万が一設備資金が大きくなるなら補助金活用すれば良い。単純に利益出たから税金を払う、払うの嫌だなあと無理くり経費をつくり利益を下げる。この手法は単純に普通預金に現金を預けていることと何ら変わらない。現状維持。現状維持は衰退を意味する。生活していくだけならこれでいいと思うが少しでも資産を増やしたい、後世に伝えたい、たまには美味しいものを食べたいなら投資という選択肢は避けて通れない。会社の社長の場合、こういう思いが強い人がなっているケースが多いはずだ。社長に向く、向かないはここで判断されてもよい。投資リテラシー、お金リテラシーは最終的に経営者の経営能力なのではないかと思っている。つまり再投資できない社長は会社をやるべきではないという極論だ。

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